午前中、肺分離における軟性気管支鏡の使い方に関するワークショップに出席した。
基本的な講義のあと、一人1台ずつ気道モデルと気管支鏡をあてがわれ、ダブルルーメンチューブやさまざまな気管支ブロッカーの使い方、特に適正な位置決めの方法を学んだ。
自分にとっては、論文ではよく見かける EZ-blocker や Cohen blocker に初めて触れる貴重な機会となった。
講義でも説明があったが、実技では EZ-blocker は二股の先端が両方とも同じ側の主気管支に入ってしまう限界があるということが、とてもよくわかった。
【以下は講義の内容(要旨)】
・気管支ブロッカーで効率よく肺を虚脱させるには、純酸素で両肺を換気しておき、機能的残気量レベルまで呼気を呼出させ、ブロッカーを膨らませる。
・ユニベントチューブは小児用から成人用までさまざまなサイズのものがあるが、内腔が小さくても外径が大きくなりがちなため、年少の児には使いずらい。
・Cohen BB は 9Fr しかなく、Arndt BB よりも硬い。楕円形のカフが特徴的。シャフトについている矢印を曲げたい方向に向け、手元のダイヤルを回すとそちらの方向に先端が曲がる。
・ユニブロッカーには 9Fr と 5Fr があり、もともと先端が曲がっているので、回転操作によって左右にコントロールできる。
・EZ-blocker は片方の先端が青、もう片方の先端が黄色。片側の主気管支に両方入ってしまうという限界がある。
・9Fr のブロッカーを用いるには、 7.5 mm のチューブが必要となる。
・DLT 35Fr の外径の大きさは、シングルルーメンの 8.5 mm に相当する。
・Wire reinforced endotracheal tube (いわゆるロングスパイラルチューブ)はサイズが 5.5 mm、6.5 mm、7.5 mm がある。
・気管支ブロッカーにアダプターをつけて、非換気側に CPAP をかける方法がある。
研修医の時からずっとお世話になった教室を巣立ち、2016年4月にJ大学に移りました。学問的なマジメな話から日常のちょっとした笑える話まで、いろいろ情報発信していきたいと思っています。
2017年10月24日火曜日
2017年10月23日月曜日
Anesthesiology 2017 第3日
午前中は輸血とブロックに伴う神経障害について、それぞれリフレッシャーコースレクチャーを聴きに行った。
広い会場にもかかわらず、神経障害の話では会場が満員近くになっており、スピーカーの話のうまさもさることながら、この話題に対する関心の高さがうかがわれた。
・赤血球輸血のガイドラインとして、ヘモグロビン濃度が 7~8 g/dl で輸血を開始し、目標を 7.5~8.5 g/dl にすえるというものがある。(Transfusion 2013; 53: 3052-9)
・輸血は 28 日以内の再入院率上昇の独立したリスク因子である。(Transfusion 2017; 57: 1347-58)
・輸血の実施にはばらつきがあり、エビデンスにのっとっていない。
・輸血実施に際しては、施設において承認されたガイドラインを導入すべきである。
・血小板投与に際して血小板数の閾値は定められていないが、5万/ul 以上での閾値では利点が少ない。
・PT-INR は出血量の予測の指標としては poor である。
・輸血のリスクは過小評価されており、TACO も TRALI もわずかしか報告されていない。
・Postoperative neurologic symptoms (PONS) のリスク因子には、麻酔だけでなく、手術由来のものや患者由来のものがある。
・末梢神経ブロック後は術後も患者をフォローして、合併症が生じたら早くそれを見つけ出し、Neurology のコンサルトを受けたり、電気生理、MRI 検査などを受けるようにする。
・6か月後の PONS の管理として、アクソンの成長が1日 1mm であることから 3 ヶ月ごとに検査を繰り返して、神経移植などの外科的介入も考慮する。12~18 ヶ月後が critical time である。
・超音波によって intraneural injection はわかるが、超音波が PNI を減らすというヒトのデータはない。
・Intraneural injection によって必ずしも機能は障害されない。
・神経に触れない (Don't touch the nerve with the needle) ことのほか、強い鎮静ではなくあくまでも軽い鎮静にすること、少量の局麻薬でのテストをすることが重要である。
・インフォームドコンセント、麻酔記録、エコーでのブロック前後の写真、術前の神経学的診察、病歴の記録が重要である。
午後は Medically challenging case の発表があった。
10分ごとに e-poster が変わるのはめまぐるしく、ゆっくりと記念写真を撮るヒマもなかった。
さらに午後は、麻薬や OSA などによる術後呼吸抑制関連のレクチャーがあった。
・OHS 患者では覚醒と回復は仰臥位を避け、半坐位で行う。
広い会場にもかかわらず、神経障害の話では会場が満員近くになっており、スピーカーの話のうまさもさることながら、この話題に対する関心の高さがうかがわれた。
・赤血球輸血のガイドラインとして、ヘモグロビン濃度が 7~8 g/dl で輸血を開始し、目標を 7.5~8.5 g/dl にすえるというものがある。(Transfusion 2013; 53: 3052-9)
・輸血は 28 日以内の再入院率上昇の独立したリスク因子である。(Transfusion 2017; 57: 1347-58)
・輸血の実施にはばらつきがあり、エビデンスにのっとっていない。
・輸血実施に際しては、施設において承認されたガイドラインを導入すべきである。
・血小板投与に際して血小板数の閾値は定められていないが、5万/ul 以上での閾値では利点が少ない。
・PT-INR は出血量の予測の指標としては poor である。
・輸血のリスクは過小評価されており、TACO も TRALI もわずかしか報告されていない。
・Postoperative neurologic symptoms (PONS) のリスク因子には、麻酔だけでなく、手術由来のものや患者由来のものがある。
・末梢神経ブロック後は術後も患者をフォローして、合併症が生じたら早くそれを見つけ出し、Neurology のコンサルトを受けたり、電気生理、MRI 検査などを受けるようにする。
・6か月後の PONS の管理として、アクソンの成長が1日 1mm であることから 3 ヶ月ごとに検査を繰り返して、神経移植などの外科的介入も考慮する。12~18 ヶ月後が critical time である。
・超音波によって intraneural injection はわかるが、超音波が PNI を減らすというヒトのデータはない。
・Intraneural injection によって必ずしも機能は障害されない。
・神経に触れない (Don't touch the nerve with the needle) ことのほか、強い鎮静ではなくあくまでも軽い鎮静にすること、少量の局麻薬でのテストをすることが重要である。
・インフォームドコンセント、麻酔記録、エコーでのブロック前後の写真、術前の神経学的診察、病歴の記録が重要である。
午後は Medically challenging case の発表があった。
10分ごとに e-poster が変わるのはめまぐるしく、ゆっくりと記念写真を撮るヒマもなかった。
さらに午後は、麻薬や OSA などによる術後呼吸抑制関連のレクチャーがあった。
・OHS 患者では覚醒と回復は仰臥位を避け、半坐位で行う。
2017年10月22日日曜日
Anesthesiology 2017 第2日
2017年10月21日土曜日
Anesthesiology 2017 第1日
ボストンの朝は気温 13 ℃とかなり涼しいのだが、東京とは違い雨は全く降っていなかった。
午前中は気道管理関係のリフレッシャーコースレクチャーを2つ受けたのだが、どちらも主張は似たような感じだった。
・禁忌がなければ、麻酔導入時の気道確保は仰臥位ではなく、上体を上げた体位 back up head elevated position で行う。
・スタイレットを抜く際に、手前に引き抜くのではなく、患者の足元に向けて抜くと気管に沿ってチューブが進みやすくなる。
・ネーザルハイフローを用いて前酸素化を行うことで、挿管困難が予測される患者での酸素化を維持できる。
・困難気道の予測自体が困難なので、つねにバックアッププランが必要となる。
・気道確保は、1回の試技での成功を目指す。
・1つの方法が失敗しても、他の方法が難しいとは限らない。
・困難気道に遭遇したら、事実をわかりやすく正確に麻酔チャートなどに記載する。
・外科的気道確保の技を習得する。
午後は awake fiberoptic intubation のハンズオンワークショップに参加した。
嘔吐反射と咳を抑制するのを目的として、3つの局所麻酔手技を学んだ。
・Periglottic cough ablation --- Superior laryngeal branch of cranial nerve X
2% リドカインを両側 3ml ずつ
・Gag ablation --- Lingual branches from cranial nerve IX
2% リドカインを両側 2ml ずつ
・Subglottic cough ablation --- Transtracheal injection or supraglottic spraying
4% リドカイン使用
トータルにすると、それなりのリドカインの量になるので、注意が必要である。
Transtracheal は野蛮な印象がするので自分はもうしていないので、正直なところ「まだやっていたんだ」という感じがした。
鎮静については、自発呼吸を残すことと、協力を得ることが最も重要だと強調していた。
午前中は気道管理関係のリフレッシャーコースレクチャーを2つ受けたのだが、どちらも主張は似たような感じだった。
・禁忌がなければ、麻酔導入時の気道確保は仰臥位ではなく、上体を上げた体位 back up head elevated position で行う。
・スタイレットを抜く際に、手前に引き抜くのではなく、患者の足元に向けて抜くと気管に沿ってチューブが進みやすくなる。
・ネーザルハイフローを用いて前酸素化を行うことで、挿管困難が予測される患者での酸素化を維持できる。
・困難気道の予測自体が困難なので、つねにバックアッププランが必要となる。
・気道確保は、1回の試技での成功を目指す。
・1つの方法が失敗しても、他の方法が難しいとは限らない。
・困難気道に遭遇したら、事実をわかりやすく正確に麻酔チャートなどに記載する。
・外科的気道確保の技を習得する。
午後は awake fiberoptic intubation のハンズオンワークショップに参加した。
嘔吐反射と咳を抑制するのを目的として、3つの局所麻酔手技を学んだ。
・Periglottic cough ablation --- Superior laryngeal branch of cranial nerve X
2% リドカインを両側 3ml ずつ
・Gag ablation --- Lingual branches from cranial nerve IX
2% リドカインを両側 2ml ずつ
・Subglottic cough ablation --- Transtracheal injection or supraglottic spraying
4% リドカイン使用
トータルにすると、それなりのリドカインの量になるので、注意が必要である。
Transtracheal は野蛮な印象がするので自分はもうしていないので、正直なところ「まだやっていたんだ」という感じがした。
鎮静については、自発呼吸を残すことと、協力を得ることが最も重要だと強調していた。
2017年10月20日金曜日
ボストンに着きました
夕方の JAL で成田を発ち、約 12 時間かけてボストンに到着しました。
ボストンは医科歯科時代の教員研修でハーバードに派遣された時、2012 年の Thoracic Anesthesia Symposium に続いて、おそらく 3 回目だと思います。
前回、ボストン到着時の苦い思い出をせっかく記録しておいたのに、今回もやっぱり同様に市内交通で迷ってしまいました。
前回と違うのはあきらめが良くなったことで、今回はあまり粘らずにタクシーでホテルへ直行してしまいました。
今回は若い先生たちの応援のほか、PBLD やワークショップにも参加する予定なので、それらについても写真を載せたり書いたりしていこうと思います。
ボストンは医科歯科時代の教員研修でハーバードに派遣された時、2012 年の Thoracic Anesthesia Symposium に続いて、おそらく 3 回目だと思います。
前回、ボストン到着時の苦い思い出をせっかく記録しておいたのに、今回もやっぱり同様に市内交通で迷ってしまいました。
前回と違うのはあきらめが良くなったことで、今回はあまり粘らずにタクシーでホテルへ直行してしまいました。
今回は若い先生たちの応援のほか、PBLD やワークショップにも参加する予定なので、それらについても写真を載せたり書いたりしていこうと思います。
2017年10月14日土曜日
東大の OSCE
外部評価者の一人として、東大の OSCE の評価に行ってきました。
これで外部評価者として他大学に訪問したのは3校めです。
今までの 2 校はいずれも医科大学または医学部だけ別のキャンパスにある大学だったのですが、東大の本郷キャンパスは他の学部もいっしょにあり、敷地が巨大で一人では会場にたどり着くことができませんでした。
病院の入り口付近をウロウロしていたら、OSCE の責任者らしき人にうまいことつかまえてもらったというわけです。
さすがに最も伝統のある由緒正しい旧帝国大学だけあり、最近できた大学や病院と違って、いろいろな建物の外見がムダに(?)豪華でした。
安田講堂の前を通った時は、「これがあの有名な・・・」と、妙に盛り上がってしまいました。
外部評価者としての守秘義務があるので、実際の OSCE の内容について書けないのが残念です。
これで外部評価者として他大学に訪問したのは3校めです。
今までの 2 校はいずれも医科大学または医学部だけ別のキャンパスにある大学だったのですが、東大の本郷キャンパスは他の学部もいっしょにあり、敷地が巨大で一人では会場にたどり着くことができませんでした。
病院の入り口付近をウロウロしていたら、OSCE の責任者らしき人にうまいことつかまえてもらったというわけです。
さすがに最も伝統のある由緒正しい旧帝国大学だけあり、最近できた大学や病院と違って、いろいろな建物の外見がムダに(?)豪華でした。
安田講堂の前を通った時は、「これがあの有名な・・・」と、妙に盛り上がってしまいました。
外部評価者としての守秘義務があるので、実際の OSCE の内容について書けないのが残念です。
2017年10月1日日曜日
臨床研修医・指導医のための研修会 再び
今年も「臨床研修医・指導医のための研修会」がクロス・ウェーブ府中で行なわれ、1泊2日で参加してきました。
研修が始まって半年たったこの時期に、本郷、浦安、練馬、静岡の研修医1年目が全員、府中に集まり、医療安全について学び、これからの研修をさらに充実したものにすることをねらいとしたものです。
私は教員の一人として参加し、主にオブザーバーとして小グループでのディスカッションを促進するような役回りを仰せつかりました。
この半年の間に指導した本郷の研修医はもちろんのこと、成田ワークショップで出会った他院の研修医と話す機会があり、ついこの前のことではあるのですが、なんかちょっと懐かしい感じがしました。
今回集まったのはほとんどが二十代半ばの若者であり、形はそれぞれであったとしても、少なく見積もってもこれから 40 年以上、医師として勤めることになるわけで、みんなの前途が明るいものになるように願わずにはいられませんでした。
うっかり写真を撮るのを忘れてしまいました。
研修が始まって半年たったこの時期に、本郷、浦安、練馬、静岡の研修医1年目が全員、府中に集まり、医療安全について学び、これからの研修をさらに充実したものにすることをねらいとしたものです。
私は教員の一人として参加し、主にオブザーバーとして小グループでのディスカッションを促進するような役回りを仰せつかりました。
この半年の間に指導した本郷の研修医はもちろんのこと、成田ワークショップで出会った他院の研修医と話す機会があり、ついこの前のことではあるのですが、なんかちょっと懐かしい感じがしました。
今回集まったのはほとんどが二十代半ばの若者であり、形はそれぞれであったとしても、少なく見積もってもこれから 40 年以上、医師として勤めることになるわけで、みんなの前途が明るいものになるように願わずにはいられませんでした。
うっかり写真を撮るのを忘れてしまいました。
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